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手前味噌ひと文字
（自選和歌集）
平成
十六
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平成十六年水無月二十一日に詠める歌
霧雨の止みてカルデラ染め分くる虹の瞬き足下に見ゆ
阿蘇の外輪山より火口の内側に虹を見下ろして
平成十六年水無月七日に詠める歌
霧雨の沼の対岸おぼろにて梅雨に入りたることぞ知らるる
涸沼に泊まりし朝、梅雨入りしたるを知りて
平成十六年水無月四日に詠める歌
コンコースに濃き影落とす夏空の一瞬にこそ永遠はあり
取手駅のコンコースへの階段を上り
つつ
平成十六年皐月二十九日に詠める歌
しつかりと棘ある野薔薇その棘の鋭さもちて常
（とは）
の薔薇たれ
隣の空き地にさける薔薇の花に
平成十六年皐月二十七日に詠める歌
畦道にかそかに常に聞こえくるそれぞれの田に引く水の音
田の面に水張られたる畦道を歩きて
平成十六年卯月二十八日に詠める歌
天と地に空はあるなり田の面に水引かれたる朝を歩けば
水引かれたる田に空の映る朝に
平成十六年卯月三日に詠める歌
道端の見る人もなき桜花しばし待ちをれ汝
（な）
を歌にせむ
日の暮れかけし道端の桜に
平成十六年弥生二十六日に詠める歌
春雨の降りたるもなほ潤はぬ世界よ暫し水を求めよ
土浦よりの帰路、カーラジオを聞きつつ
平成十六年弥生二十三日に詠める歌
昼下がり行き交ふ人の足元に空を映して光る敷石
よく磨かれし敷石に映る空をみて
平成十六年如月二十五日に詠める歌
ゆつたりとスケッチをする人のそば せはしさ悔ひてシャッターを押す
スターバックスの窓より望む景色を、鉛筆で写す人をみて
平成十六年如月十六日に詠める歌
風いまだ冷たく吹けど川面
（かはつら）
に 「光の春」 の輝くを見る
日の光の春めききたる日に
平成十六年睦月十八日に詠める歌
霜よりも淡く積もれる雪なれば彼誰
（かはたれ）
の間に踏みて歩かん
淡雪の積もれる朝に詠めり
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