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Wakalog 手前味噌ひと文字  (自選和歌集)
平成 十六 年 下半期
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平成十六年大つごもりに詠める歌

解け残る大つごもりの雪を載せ春に向きをり車輪梅の葉
雪の残れる大つごもりに

平成十六年師走一日に詠める歌

遠くなど見えぬ都会の日溜まりでまなざしのみの遠く漂ふ
小春日和の新橋駅で

平成十六年霜月二十九日に詠める歌

玉砂利に散れるもみぢ葉風吹けば一枚 (ひとひら) のみが裏返りたり
小春日和の日に

平成十六年霜月二十一日に詠める歌

松茂る高みに立ちて見ゆるもの見えざるもののすべてふるさと
故郷の日和山にて

平成十六年神無月二十七日に詠める歌

百舌は鳴く己が食せし虫どもの断末魔のごと長く尾を引き
百舌のかまびすしく鳴く日に

平成十六年神無月十日に詠める歌

折るるべき枝にしあれば折りしこそ恵みなるらめ野分過ぎたり
台風二十二号の過ぎし朝に

平成十六年長月十三日に詠める歌

草の色映す川面に舞ひ降りて鷺は見るらむおのが白さを
川に舞ひ降りし鷺を眺めて

平成十六年長月二日に詠める歌

ペダル踏む少年のシャツは風孕み鎧と化せり細き背離れ
風強き朝の通学路にて

平成十六年葉月二十日に詠める歌
打ち水の上をタイヤでなぞりつつ朝一番の宅配届く
打ち水の上からアスファルトにタイヤ模様を描きて宅配きたる朝に
平成十六年葉月六日に詠める歌
エアコンの水溜め置きてまん丸に映れる空を地に放つなり
暑き日の打ち水せんとして

平成十六年文月二十四日に詠める歌

捉はれずただ舞ひ遊ぶ蝶を追ひ吾も捉はれずシャッターを押す

土手の花に遊ぶ揚羽蝶に
平成十六年文月十七日に詠める歌
真白なる蓮の開けるかはたれはせぬ音もなほ響く心地す
肥後の国人吉青井神社前の蓮を見て

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