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　 平成三十一年 卯月 （四月） の歌 　
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1日   令和とは耳に馴染まぬ響きなれど慣るるよりほかなきことならむ
2日 ☆ 久方の筑波の地では遅咲きの梅と桃とが咲き誇りゐる
3日   鮮やかに筑波の西に沈む日を半月振りに眺めゐるなり
4日 ☆ 日の暮れて車のドアを開くとき風の温もり感じたるなり
5日 ☆ 春風の吹き荒れてなほ暖かき日暮れの川の波収まらず
6日 ☆ 昨日の強風にても散り残る日枝神社の桜の花よ
7日 ☆ 黒潮に洗われ光る土佐の地の花はぶといふ茶を淹れて飲む
8日 ☆ 桜咲く時分となればなきはずの寒の戻りの風の冷たし
9日 ☆ 春の陽と冬思はする寒風の交差点に咲くローズマリーよ
10日   満開の桜も七日眺むれば有り難みやや薄らぐ心地す
11日   この年の寒の戻りを経て咲ける北と南の花の十日よ
12日   加賀の地の遅き花見る旅路より戻れば雲の抜けたる夜空
13日 ☆ 還暦を過ぎて花見の二七日一生分と思はざれども
14日 ☆ 日暮れより降り始めたる春雨に二七日咲く花も散るらむ
15日   花散らす風吹く中にエンジンの音響かせて草を刈りたり
16日 ☆ 二七日咲きたる花も風に舞ひ散るを眺めて伊予に発つなり
17日   松山の道後温泉からの約三キロの道歩き戻れり
18日 ☆ 瀬戸内の光の風の渡り来る伊予の山道抜けて歩きぬ
19日 ☆ 日暮れては春の温もり遠ざかり市営グランドに冷たき光
20日   陽光の二日続けて輝けば車輪梅の芽膨らみ始む
21日   曇り空住む人もなく売家てふ看板のある家ぞ寂しき
22日 ☆ この年の初エアコンを作動させ百キロの道往きて戻りぬ
23日   満々と水を湛える岡堰に映る空色初夏を宿せり
24日   日暮れ際に晴れたる雲の戻り来て明日は一日雨となるらし
25日   「N」というキーのみ黒に塗られたる色の剥がれて年季入りたり
26日   春雨といふには冷たき雨なれど季節の流れ推し進めゐる
27日 ☆ 複数の雲間をぬいて複数の太陽あるかのごとき光よ
28日 ☆ 早朝の世界の既に明るみてぐいぐいと昇る朝日頼もし
29日    昼過ぎに雲の分厚くなりかけて川原の風に舞ふ鯉のぼり
30日 ☆ この年も田に水引かれ空映す一年といふ時の速さよ
　 　 　
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