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　 平成二十八年 卯月 （四月） の歌 　
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1日 ☆ 春嵐といふ二文字を電脳に覚えさせたる四月馬鹿の日
2日 ☆ 里山の麓の道を分け入れば白きすもものき花の揺れゐる
3日   桜咲く並木の奥にひつそりと白くつましき姫卯木咲く »
4日 ☆ 雲晴れて春の日射しの届きたれば花芽膨らむ車輪梅の木
5日 ☆ 誰もいぬ中学校のグランドと浮世を区切る桜満開
6日 ☆ 境内を雲の如くに覆ひつつ桜は今日を盛りと咲けり
7日   桜花雨如きでは散らぬとも明日来る風に吹雪となるらむ
8日 ☆ 雨降りと少しばかりの風如き花を散らすに能はざるなり
9日 ☆ 日暮れても残るぬくみに誘はれて蛙一匹鳴き始めたり
10日   山腹にたなびく雲の如くして薄き桜の色は望まる
11日   春色の空を映せど木枯らしと同じき波紋刻む流れよ
12日 ☆ 川岸にずらりと並ぶ釣り人の帰りたる後も川流れ行く
13日 ☆ わが作るパン膨らます酵母菌の何十万回の世代交代
14日   肥後国は今しもなゐの続くとふ大津の夜は静かなれども
15日   打ち寄する波に塩気のなきことの不思議と思ふ大津の湖畔
16日 ☆ 揺れてゐることが常なる気もすなる肥後の人らのために祈らむ
17日   日本海側の食材で我が体奥の部分はできたりとみゆ
18日 ☆ 十二年前のなゐにて揺れし地を鎮めるごとく片栗は咲く
19日   九州でなゐは止まらずつくばでは雷の鳴る日は暮れて行く
20日   熊本は揺れ続けるに加茂川の水の流れは穏やかなりき
21日   雨雲に追ひつかれしも雨傘は遂にささずに戻り来たれり
22日   見渡せば思ひの外の明るさで残照のある地平線なり
23日   ダイヤルを回せばジーコンジーコンと昭和の音のする黒電話
24日 ☆ 動き出せばフロントガラスに積もりたる花びら舞ひて吹雪となりぬ
25日 ☆ 春の日の関東平野に風吹けば花吹雪なす八重の桜よ
26日 ☆ 再生のボタン押せども動かざりされど愛しき初代ウォークマン
27日 ☆ 降るはずの雨降らぬ間に夜は更けて赤信号の長き県道
28日 ☆ 雨降りにシャツ一枚で外に出で寒さ覚えぬことぞ嬉しき
29日 ☆ 空の色映してさらに空よりも青き入り江に波は打ち寄す
30日 ☆ 列をなし風に僅かに震えゐる早苗の面は今日も増えたり
　 　 　
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