和歌ログ - 平成十六年弥生（三月）の歌

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	平成十六年弥生（三月）の歌
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1日		戻らぬと思はれし「寒」といふものの戻りてもなほ梅ほころびぬ
2日		自動車の窓に凍てつく霜までも半月前より戻り来たりぬ
3日	☆	国道を風吹き抜ける黄昏に蜜柑色なりヘッドライトは
4日		ユビキタスといふもの十年前ほど前のインターネットのやうに思はる
5日		新しきパソコンてふは新しき住処のごとし家移りに力仕事はなかりしかども
6日		むき出しの畑の土の風に舞ひ筑波嶺もまたむせかへるなり
7日		町内の自治会総会の知らせ来て「コミセン」なるものできたるを知る
8日		土手際に緑の増えて雑草といふ名の草はなしと聞こゆる
9日	☆	川筋にパワーショベルの築く道は古き流れを閉づる岸らし
10日	☆	有明の海を見渡すテラスにてテーブル越しに雀と見合ふ
11日		大風と地震で揺れる家の中捜し物して時間は経ちぬ
12日		新幹線のプラットホームのガラス越しに切り取られたる城壁を望む
13日	☆	世の中のなべての人よ来て見よやおのが遺伝子の為せるこの業（わざ）
14日	☆	日溜まりもまだできぬ間の梅の花「おはやう」の声に色づいてゆく
15日		米中韓広東語まで取り混ぜてエンドレステープの呼び込みは流る
16日		ゆっくりとゆっくりと回る観覧車うねる高架よりそを眺め行く
17日		この国は湿り気ありて心地よし明日の雨待つ砂ぼこりの里
18日		深々と座りたる膝にモバイルを置きて開けば我がオフィスなり
19日		自らの意識の底の昭和初期レトロポスターにそを垣間見る
20日	☆	桜にも追ひ越さるるか遅咲きの梅が呼ぶらむ彼岸の寒さ
21日		目覚むればよしなしごとを覆ふ霧好きことのみを透かしてぞ見む
22日		予報では雪に変はると言ひし雨も降り続きては日暮れとなりぬ
23日	☆	昼下がり行き交ふ人の足元に空を映して光る敷石
24日		この道の「桜のトンネル」となるを待つ蕾は未だ固くあれども
25日		ロケットという名のハーブ咲きにけり小さき糸巻き車の如く
26日		春雨の降りたるもなほ潤はぬ世界よ暫し水を求めよ
27日		故郷の真白き峰に影落とし行く雲の下雪は舞ふらむ
28日		頂は冬の姿の山ありて春の波寄す故郷の海
29日	☆	みちのくに生まれしをのこの本懐ぞ太く打ちたる蕎麦を噛み締む
30日		自転車をこぐ脚もまた軽くあるか花のトンネル潜る季節よ
31日		岸辺より水面に映る自らに見入るがごとく咲ける菜の花

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