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　 平成二十五年 文月 （七月） の歌　
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1日 ☆ なにごともなく暮れてゆく夏空のそのなにごともなきぞ嬉しき
2日   震災の夢より覚めて咲くことの喜び思ひ出したる薔薇よ
3日 ☆ 注連縄の風になびけばをちこちで夏の祭は始まりゐるらむ
4日   雨止みて涼しさを呼ぶ風吹けば僅かに揺れて赤き薔薇咲く
5日   マジョラムに群れ飛び来たり蜜を吸ふ蜂は我らと同じきいのち
6日 ☆ 熱き陽は雲の彼方で沈み行き時計の針の遅き動きよ
7日   夕食にまともな額を支払ひてまともな味と雰囲気を食ふ
8日☆ 雷に注意せよとの呼びかけを消す勢ひのラジオのノイズ
9日  雷は遠くに聞こえ夕立もつくばの里を過ぎて行き過ぐ
10日☆ 両岸の緑の上に 「濃密」 といふ字貼り付け行く夏の川
11日  もくもくと湧き上がりては夏空を入道雲は切り開き行く
12日 

ぎらぎらとしたる空の色収まれば今日は暑さに耐へてみしようぞ
13日☆ 常磐線プラットホームは水蒸気立ちこめて夜の明かりに霞む
14日  我が夏は白く小さき花の咲くクリーピングタイムに埋もれて
15日☆ 半世紀前に消えたる砂浜を偲べば傍を電車行き過ぐ
16日☆ 真夏日にならぬ日の風受けて咲く薄紅葵の色ぞ浮き立つ
17日  備後なる国のもてなし蕎麦をすすり明日の仕事に備へんとぞする
18日  石垣に偲ぶ昔の風を受け福山城を後にせんとす
19日☆ 筑波嶺の裏に廻りて眺むれば新しき顔の山が立ちたり
20日☆ 夏雲の湧くを忘れて土手際に薄紅葵涼しげに咲く
21日☆ 夏終はると見まごふほどの青空に羽毛の如き白雲ぞ浮く
22日☆ 夏草を刈りたる土手は夏空の下に枯れ草色で横たふ
23日  箸先でたぐりてつける鴨汁に常陸の里の味を探らむ
24日☆ 夕闇の高速道の柔らかき灯りに雨の香り残れり
25日☆ そこここに踊る阿呆の気配あり熱き風吹く徳島の夏
26日  何処より湧き来るものか東京を埋めて歩く人に驚く
27日☆ 筑波嶺の方角を染め音もなく光る遠雷の里に下り来ず
28日  昇るともはたまた昇らずともつかぬスカイツリーを横目で身上ぐ
29日☆ 竹繭といふものあれば迷はずに入りて蚕の目で外を見る
30日  思案することも忘るる坂道を昇り下れば思案橋通り
31日☆ 長崎よ遠き昔よりいと遠き地に続きたる港の街よ
　 　 　
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