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平成二十五年 水無月 （六月） の歌
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(☆印= 日記オススメ）
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1日
薄皮の下に弾くるいのち宿しトマトは赤く実りたりけり
2日
梅雨空の三日もたざる今世紀青空の下青田広がる
3日
☆
巣の中で懸命に啼くひな鳥の嘴の似て紫陽花咲き初む
4日
銀色に光るステンレスの水筒の夏に向ひて頼もしきかな
5日
☆
暮れてゆく先のわずかな明かりにもまだ啼き止まぬ鳥の声する
6日
大曲といふ名の交差点に立ち季節の曲がり角こそ眺め
7日
旅先に響く雷をやりすごし一人茶を飲み寝ねんとぞする
8日
牛蛙二匹競ひて我が宿の階段の踊り場に声を響かす
9日
自動車の窓開け放ち国道を行けば栗の木に白き花咲く
10日
☆
道端のただ一本の栗の木の白き花房揺らし風吹く
11日
☆
行く水に色も形もなけれども木も空も地も水の色なり
12日
梅雨の朝青きエンジンフードには扇の如く水滴広がる
13日
どこにでもある一枚の水彩画の下のベッドで一夜寝ぬらむ
14日
☆
遷宮の新しき宮の白木なる鳥居本殿見ゆるぞゆかしき
15日
三十年を一飛びに越え来てみれば昔と同じ二見浦なり
16日
南国の日の色さして紫陽花の花は見事に開きゐるなり
17日
☆
一筋の模様を広げ今生の終りを待つかイチモンジチョウ
18日
遙かなる野分に続く黒雲の長崎空港を飛び立たんとす
19日
☆
踊り場の網戸でじっと虫を待つやもりの腹をふうと吹きたり
20日
次々と野分来るこの列島を稲は緑に覆はんとぞする
21日
道端には高圧線の交差するジャンクションらしきものもあるなり
22日
はるばると来たるいわきの青空に今日弔いの風は吹くなり
23日
米寿にて弥陀の御許に旅立てる君最期まで凛としてをり
24日
☆
長き日はわが記憶よりたつぷりと余韻を残し暮れてゆくなり
25日
☆
かくも濃き群青色の夏空を見上ぐるにさへ限りあるらむ
26日
雨粒の空より注ぎ紫陽花の似合う季節に遂になりたり
27日
長き日の真夏の色は空ならで地の照り返しにぞあると知りたり
28日
旅に来て備前の国の駅ビルの讃岐うどんを食せんとする
29日
ままかりの寿司喰ふうちに新幹線はただ今時速二百七十キロ
30日
☆
空梅雨といへども雨は降るらむと知る小貝川の幅の広さよ
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