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　 平成二十五年 葉月 （八月） の歌 　
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1日 ☆ 坂東の平野の西に沈む日は柔らかきかな光も色も
2日 ☆ 土手草をわしわしと刈り進みゐる車の後ろ姿は淋し
3日   夕立の通り過ぎたるひたち野にロックの音と花火は響く
4日 ☆ 散ることを知らず真夏の紫陽花は咲きゐしままの姿で乾く
5日   見渡せば雲湧き上がりその下の暗めるところ雨の降るらむ
6日 ☆ すり切れたるサファリハットをかぶり来て三十五年は短き月日
7日   岩のりをやまほど載せてすすりたる夏のうどんに湯気は立たざり
8日   暑き日の体冷やさむ一切れの茄子を冷蔵庫より取り出す
9日   覚悟して来たりといへど尾張なる黄昏らしくなき暑さかな
10日 ☆ 灼熱と蒸気で霞む山の端に熱き火の玉沈む夕暮れ
11日   われ未だ茨城人になりきれず来月知事の選挙あるらし
12日 ☆ 遅き梅雨明けて間もなき故郷の盆に清かに咲ける紫陽花
13日 ☆ 峠より磐城の国を見下ろせば緑なす地に阿武隈は霞む
14日 ☆ 咲く花のいと少なきは灼熱に耐へかねたるか白き木槿よ
15日   日の高き祇園の街に暑き風渡りてぽつくりの音は響きぬ
16日  大原の寺の仏と向かひ合ひ帰らむとして食ふにしん蕎麦
17日  薬師釈迦阿弥陀如来の坐し給ふ寺に声明の声ぞ聞こゆる
18日  大原の宝泉院に靴を脱ぎ座ればしばし立つぞ忘るる
19日☆ 宇治川を渡り来る風に都路の暑さをなかば忘れ佇む
20日  帰り来てひむがしの空見上ぐれば十五夜の月昇り来たりき
21日  雷の気配迫りて暮るる空に急かれて家に辿り着きたり
22日  世の中で起きてあるまた起こらむとする戦争に否を示さむ
23日☆ 人間といふ葦は書にいはるほど考ふるともいへぬ葦なり
24日☆ 遠花火徒らにもつカメラには写らざるなり音のみ聞こえ
25日☆ 頬撫づる夜風の渡る駐車場に終はらぬ夏の終はりの初め
26日  涼しき夜にほつと見渡す駅前のロータリーさへほつとしてゐき
27日☆ 涼風につくつく法師泣き止みて夕焼けの見ゆ終はる夏かは
28日  夏空の下で稲穂の垂るる日に吹き来る風を涼風と呼ばむ
29日  ブルーベリー二十オンスは底を突くこと難しき米国仕様
30日☆ 交流の電気にしびれる心地してバッタは宙を震わせて飛ぶ
31日  台風の看板おろし海を来る雲の塊に連なる空よ
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