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平成十六年 皐月 （五月） に詠める歌
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(☆印= 日記オススメ）
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1日
をちこちに鼻突きつける犬待てば遠き景色も動かざるなり
2日
兄二人靖国に在る義父なれば今年も歩む石の参道
3日
☆
朝ぼらけ水張られたる田の面 （おも） に映る景色に昔思はる
4日
警報にあらねば注意報となる日ごとに空の乾きは進む
5日
やうやうの雨もあがりて渋滞も消へつつあるとラジオは告げり
6日
☆
田の面に映れる空の挿し色の緑の画素は日ごと増え行く
7日
ひさかたの光を浴びる県道のフロントガラスの内の影法師
8日
皐月とはなほさやかなるものなりき記憶の中の初夏の光よ
9日
郊外の国道沿いの日は暮れてオレンジ色の灯は並びゐる
10日
真白なる雲の通ひ路ひたすらに西に向かへば青き海見ゆ
11日
信長と茨木童子舞ひてあり口開けて見る飾り山笠
12日
☆
草刈りの鎌の刃先の欠けたるを研ぎに研ぎたりまたの日のため
13日
いと厚き漫画雑誌は道端で扇型して風に吹かるる
14日
あめりかにありても結ぶ糸あればいつものごとく和歌ログをせむ
15日
あめりかに旅立つスーツケースには場違いなれど古語辞書はあり
16日
アメリカに着きて最初の朝なれば大聖堂の礼拝に行く
17日
幻のごとき歴史に刻まれしグラウンド・ゼロに時間は止まる
18日
西洋の静寂てふは漂へる時間を止めるごとく在り
19日
小男鹿 （さをしか） の入野至りし影 （かご） させばあめりかの夜ははや更けにけり
20日
ミシガンの湖の面なるレンズには人の心の様が映れリ
21日
あめりかのあめりからしさ極まればラスベガスてふ空蝉の街
22日
巨大なるカジノとホテルその中に幾百万の言の葉はある
23日
飛行機の日付変更線を越す時には大和心となりぬ
24日
白鷺のふわと青田に舞ひ降りぬ "Welcome back" と言ふかのごとく
25日
青々とした田の中の一区切り色付きて今麦秋となる
26日
白鷺の田に遊びゐる足先に土塊 （つちくれ） 光り乾く間もなし
27日
☆
畦道にかそかに常に聞こえくるそれぞれの田に引く水の音
28日
近づきてレンズ向ければ飛び立てる鳥は彼方でことさらに鳴く
29日
しつかりと棘ある野薔薇その棘の鋭さもちて常 （とは） の薔薇たれ
30日
濃く重く萌え上がるごと木も草も緑重ぬる季節となりぬ
31日
県道を走る車を追ひ越して雲の影飛ぶ明日は梅雨てふ
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