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<< 平成三十年 上半期
平成三十年師走二十八日の歌
澄み渡る夜空の奥に年の瀬を刻むが如くオリオン座あり
平成三十年師走日の歌
クリスマス過ぎて一輪の薔薇咲きにけり地面に白き霜降りゐるに
平成三十年師走二十一日の歌
冬の日の茜の地平奥深く飽かず眺むるシルエットの富士
平成三十年師走十日の歌
誰しもが冬来たりしと認めたる空に三日月冴え冴えと照る
平成三十年師走六日の歌
街灯の明かりの奥の彼方より露の落ち来る気配する夜
平成三十年師走三日の歌
日の暮れて冷たき風に変われどもペダル漕ぐ身は冷えもせぬなり
平成三十年師走一日の歌
風もなき小春日和の青空を飛行機雲が成田に向かふ
平成三十年霜月三十日の歌
この冬は薄の穂さえなかなかに枯れず日差しの下で佇む
平成三十年霜月二十五日の歌
二uの蝶寄り添ふごとく舞ひ飛ぶは小春日和の森の端の道
平成三十年霜月十九日の歌
白樺の幹の色のみ白樺で紅葉の色紅葉たり得ず
平成三十年霜月十三日の歌
ふと窓を振り返り見る午後五時に枯れ草色も緑も見えず
平成三十年霜月五日の歌
平成三十年霜月四日の歌
平成三十年霜月一日の歌
平成三十年神無月三十日の歌
秋空を横切りて飛ぶ旅客機の頼もしくさえ見ゆる輝き
平成三十年神無月二日の歌
雲陰に居待月てふ名の月の潜みゐてほの明かりのみ見ゆ
平成三十年神無月二十三日の歌
まだらなる黒雲越しに昇り来る望月の縁滲みゐるなり
平成三十年神無月十七日の歌
田舎道最終バスの直前のライトの中でただ暗きのみ
平成三十年神無月十日の歌
峠より見る谷筋に僅かにも始まりゐるか紅葉の秋
平成三十年神無月九日の歌
突然の小雨の後の青空はやや重たげに綿雲が浮く
南面の窓の網戸を這ひ廻る椿象の腹に見とれてをりき
平成三十年神無月一日の歌
川幅を普段の倍にまで拡げ野分は夜明け前に去りたり
平成三十年長月二十五日の歌
雨降りてそして止めども虫たちの鳴き通す声常に変はらず
虫の声の絶えぬ季節
平成三十年長月二十四日の歌
中秋の名月なれば黒雲も切れて夜空の片隅に寄る
平成三十年長月二十二日の歌
雲量は日の暮るるまで減り続けふと見上ぐれば小望月照る
平成三十年長月二十日の歌
花咲かすこと思ひ出し次々に涼しき風に開く木槿よ
平成三十年長月十六日の歌
舞ひ降りし白鷺が三歩近付けば青鷺は五歩遠ざかりたり
平成三十年長月十三日の歌
久しくも忘れてゐたる肌寒き夕べの風の渡る川岸
平成三十年長月四日の歌
何処より千切れ来たるか横丁の空を横切る雲の速さよ
平成三十年長月一日の歌
平成三十年葉月三十日の歌
平成三十年葉月二十二日の歌
猛暑日の空を映して空よりも青き流れと化する小川よ
平成三十年葉月十六日の歌
北陸の雨雲千切れ吹き来たり淡海の空覆ひたるらし
平成三十年葉月十四日の歌
雲流れつくつく法師鳴きをれど秋思はする風は吹かざり
平成三十年葉月十三日の歌
平成三十年葉月四日の歌
大接近してゐるといふ火の星の大きく見ゆる暑き夜空よ
平成三十年葉月二日の歌
日の暮るる刻限はやや早まれど夜風と呼ぶに足る風吹かず
平成三十年葉月一日の歌
立ち上る蒸気は熱く筑波嶺を昇りて白き雲となりたり
平成三十年文月三十一日の歌
青空にことさらの雲湧きもせずただひたすらに暑き夏の日
平成三十年文月二十九日の歌
椎茸と思はるれども採る者のなきまま森を抜けて戻りき
平成三十年文月二十四日の歌
朝方に刈りたる草は昼過ぎに焦げたるごとく枯れ果ててをり
平成三十年文月二十日の歌
郊外の小さき駅のバス停で人待つ我を焼く如き陽よ
平成三十年文月十三日の歌
次々に白く咲いては散り落つる木槿の夏よ穏やかにあれ
平成三十年文月七日の歌
六日ぶりの青空見上げ様々の雲の浮かぶにしばし驚く
平成三十年文月三日の歌
空の青映せる海の風を受け紀州の寺に蓮は輝く
平成三十年文月一日の歌
懲りもせずヒルクライムせる暑き日の暮れて空には居待月照る