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  平成二十八年 神無月 (十月) の歌 
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1日 秋風の吹かざるままに日は暮れて街灯はみな滲みゐるなり
2日 白鷺の一羽飛び去り二u残る水面に真鴨五羽降り来たり
3日 日の射さぬ秋とはいえど刈田にはひつじ生えして和らかなりき
4日 ゆつたりと空に浮かびてことさらに何をするでもなき飛行船
5日   ガチャポンといふ名の自動販売機ゴミ箱の前淋しくも立つ
6日 ペダル漕ぎ利根川江戸川中川の三本の川渡りたるなり
7日 頬撫づる風の涼しき日の来るを人は今日まで待ちわびゐたり
8日   満開のダリアと菊が肩寄せて秋の花瓶に活けられてあり
9日   緑なる葉は広がりて黄金色の菊に言葉を発せしむなり
10日 葉を落とし蕾も見えぬ桜木は秋空に身を隠し佇む
11日   台風のまたもあるらしこの秋の三日続かぬ青空思ふ
12日 その先に下る坂なき港には灯りともして浮かぶ帆船
13日   長崎の去り際に腹満たしたり海には海の親子丼あり
14日   死ぬるまで我は三碧木星の来る年の書を買ひ求めたり
15日   "Crisp" といふ言葉ある彼の国のぱりりとしたる感触思ふ
16日   青空の沼に映りて天地の二倍になれる今日の嬉しさ
17日   降る雨もさほど長くは続くまじ川の水かさ低きままにて
18日 夕焼けの紅き西空撮り逃し残照のみの明日につながる
19日   みちのくの山の彼方に続きたる秋の青空なほ深まれり
20日 懐かしき 「出羽桜」 てふ看板の彼方に煙る朝の山並
21日   韮崎の駅より見ゆる観音の彼方に我は登らんとぞする
22日 空と山と草地に牛の見ゆるほか何もなきこそ清々しき地よ
23日   ひむがしの日射しを浴びて不規則に稜線伸びる南アルプス
24日 花も葉も散らせ尽くして桜木は見えざる華を内に宿すか
25日 秋雨のフロントガラスをわずかにも濡らす日暮れに光る街の灯
26日 新橋の駅前広場正午にて汽笛一声鳴り響きたり
27日 国道の土手越しに日を受けながら薄は光る穂を揺らしたり
28日   雨降りの路面に赤と銀色の車の灯り深く映れり
29日   枯れ葉色増え行く中で風に揺るコスモスは目の奥に染み入る
30日   地を覆ふヒメツルソバの桃色の小さき花の白くなりゆく
31日 秋の日のするりと落ちて対岸のヘッドライトの滑りゆくなり
 
 
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