和歌ログ - 平成二十八年長月（九月）の歌

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	平成二十八年長月（九月）の歌
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1日		そそり立つ瞰望岩の頂上にいつの日か立つこともあるらむ
2日	☆	野分去り青く澄みたる空のもと田は黄金にぞ変はりたりける
3日		テルモスの適度の油温で淹れたる茶をシェラカップで飲む昼下がり
4日	☆	黒雲の中より響く低き音は遠雷鳴るか飛行機飛ぶか
5日	☆	暑き日の底震はする遠雷の彼方を通り過ぎて暮れゆく
6日		イタリアン・グレイハウンド種の犬と秋の半日ともに暮らしき
7日	☆	これでもかと蒸し暑き日の夕空に秋の気配を探してをりぬ
8日		日が沈みなほ蒸し暑き部屋の内華氏八十五度摂氏二十九度
9日	☆	日暮れには耳を澄ませば三種類鳴く虫の声聞こえくるなり
10日	☆	秋桜の僅かに揺れて咲きゐるは風の力か自ら揺るか
11日		水かさの減りたる川の草むらに青鷺は立ちじっと動かず
12日	☆	夕暮れの川面に丸き波紋あり魚の跳ねたる音に続きて
13日		猫じゃらしなびかする風吹かずして川面に波の立つこともなし
14日		頃合いの気温と湿度に恵まれて天然酵母のパンこね上がる
15日	☆	夕暮れのブレーキランプの眩しさで彼岸近付きつつあると知る
16日	☆	待ちゐたる雲居の切れ間巡り来て一夜遅れの名月を見る
17日		身に余る花束といふ賜物に礼の言葉も思ひ浮かばず
18日	☆	石垣と濠のみ残る城跡の水面に長く移る街の灯
19日		野分より伸び来る雲の間隙を突きて自転車漕ぎ帰りたり
20日		台風の風と雨との勢ひは時折休みそして強まる »
21日		曇り空映して川は重たげに流るる如く止まれる如く
22日		水しぶき上げて彼岸の日にかかる秋雨前線の下潜り行く
23日		雨不足日照不足に耐え来たり花の終はりに近づく木槿
24日	☆	生けられし花瓶の上で白百合の花はだらりと俯きにけり
25日	☆	まことにも青き空より届きたり久方のてふ枕詞よ
26日		掘留の街を歩きて糸偏の看板の数減りたるを知る
27日		ルッコラは土の恵みを僅かなる苦みと変へて我にもたらす
28日	☆	細長き葉の風に揺れ地面には栗のいがのみかたまりてあり
29日	☆	青鷺の流れの中に立てる瀬は思ひのほかに浅しとぞ知る
30日		この秋の長持ちのせぬ青空の機嫌取りせむ月替わりくる

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