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　 平成二十三年 皐月 （五月） に詠める歌 　
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(☆印= 日記オススメ）
 　
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1日 ☆ 散る花を眺めて止むる能はざる波風のはや静まるを待つ
2日 ☆ 三春なる枝垂れ桜の色の奥に物狂ひなる色ぞ潜める
3日   大粒の雨の波紋の広がりを久方ぶりに眺めゐしなり
4日 ☆ 見渡せば花見ゆるなりさらにまた見つむれば芥子の聞こえ来るなり
5日 ☆ 空き地では土壌貧しきままなれど薔薇の蕾の膨らみきたり
6日 ☆ 揚雲雀ただ鳴く声のする夕にファクスの訃報ゆるりと届く
7日 ☆ 来ては去りまた来る春にはや夏の面影あらむ花は咲きゐて
8日   紅白に萌ゆる躑躅の咲き出でてはや夏空の広がるを知る
9日 ☆ 歩けどもなほ歩けども対岸で姿の見えぬ行々子啼く
10日   舗装路の下で液状化は進むらむ沈む道路の水溜まり深し
11日   わだつみの水にはあらぬ真水にて国満たさるる頃とはなりぬ
12日 ☆ 雨の中に溶くる早苗の色失せて田に映る世にさざ波もなし
13日 ☆ 早緑と小さき花の差し色を映す川面の風の文様
14日 ☆ 通り雨過ぎてなほ湧く夏雲の余震の知らせ今日も止まざり
15日 ☆ 神霊を招ぐてふ香り黄心樹 （をがたま） の花は開きて夏は来にけり
16日 ☆ 一様に風になびきて揺るる苗の合間に波は流れ行くなり
17日 ☆ 殊更にぎらぎらとして夕立を知らす光の中を彷徨ふ
18日   赤き薔薇の似合ふ土地にもあらざるに今年も赤き薔薇は咲きたり
19日   濃き影を地面に落とし咲く薔薇の紅きを人に伝へむとぞする
20日 ☆ 車輪梅は小さき花を次々に咲かせ夏への道を開けり
21日 ☆ 望むもの一つも持たぬ我を未だ見限り難く眺めゐる鯉
22日 ☆ 生ひ茂る草刈り終へて降る雨を午睡のうちに聞きゐたるなり
23日 ☆ おろおろと歩く間もなき月曜の空を覆へる雲黒きなり
24日 ☆ 雨止みて広がり来たる青空を見上ぐればただ旅に出でたし
25日 ☆ ただ一輪咲きて力の尽きてのちなほ紅きまま地に残る薔薇
26日 ☆ 紫陽花の花芽の未だ白ければ梅雨の兆しに気付かざるふり
27日   梅雨入りと聞きて時折霧のごと降る雨の下花菖蒲咲く
28日 ☆ 重だるき雲辛うじて浮かびゐてわけもなく声を潜めゐるなり
29日   青々とせる葉を捨てず大根のまるのままなる姿ぞ嬉しき
30日 ☆ 遙かなる南より来し黒雲の薄れて青き空濡れ光る
31日   野分過ぎ遠き北より吹く風の短き髪の隙間に届く
　
　
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