和歌ログ - 平成十九年水無月（六月）の歌

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	平成十九年水無月（六月）の歌
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1日	☆	つばくろのついと横切る川の面に番（つがい）の鴨の浮かびて休む
2日	☆	草を刈るエンジンの音微かにも運び来る風マーガレット揺る
3日	☆	青田より飛び立つ鷺の脚先を僅かに染むる赤黒き土
4日		この夏は暑き夏とぞなるならむ梅雨入り前の風は告げゐる
5日	☆	下町の東京メトロの入り口に自転車はただ主を待ちゐる
6日		駅に向かふ道に今年もじふやくの咲けば親しき心地増したり
7日	☆	ゆりかもめの名を負ふ車両ひたすらに軌道をうねる羽ばたきもせず
8日	☆	梅雨入りを控へし風に道ありて川面の波にそは刻まれり
9日	☆	見渡せど他のどこにもなき白の羽つくろひて鷺は佇む
10日		黒雲はおのが重みに耐へかねてこの広き野に降り注ぐらむ
11日	☆	下町の思いがけなき足許に水はずつしりとたゆたひてあり
12日	☆	蜘蛛の巣は夜来の雨と霧を受け珠の綴りとなりて光りぬ
13日	☆	何を見ることもなく皆公園の同じき方を眺めゐる昼
14日	☆	五月雨の青田に光る白銀（しろがね）の首伸ばしてぞ鷺は佇む
15日	☆	棕櫚の葉は日向の国の五月雨に濡れにぞ濡れて重く垂れゐる
16日	☆	日向なる国の陽射しをついぞ見ぬ旅にしあればまた訪ね来む
17日	☆	五月晴れ白き葵は真直ぐなる茎を日ごとに咲き昇り行く
18日	☆	称名を聞きつつあるいは唱へつつ念仏坂を人は行きしか
19日	☆	夕暮れと逆方向の陽射し浴び白く輝く朝の駅前
20日		辛うじて想像上のフィルターを通し都会の空気を吸ひき
21日	☆	雲晴れて弓張月の浮かび来ぬ夏至は明日なり今日にしあらず
22日	☆	堰満たす水面と夏至の夕暮れの流れを止めて映る梅雨空
23日	☆	川越しの雲居僅かに赤く染め陽の残りゐる長き黄昏
24日		つばくろの雛顔中を菱形のくちばしにして餌を待ちゐる
25日	☆	西つ方黒雲途切れ望む日は思ひがけなき高みにありぬ
26日		電線を張り巡らされ細切れに区切られてなほ重き梅雨空
27日	☆	都市てふはそこかしこにぞ異界ある心して行けこのガード下
28日		いかに見む工事現場に積まれたる瓦礫にもまた命のあらば
29日	☆	月山の源に降る五月雨の音こそ響け里に寄せ来て
30日	☆	墓下の小さき穴を僅かにも埋めて浄土に母は逝きたり

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