和歌ログ - 平成十九年皐月（五月）に詠める歌

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	平成十九年皐月（五月）に詠める歌
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1日	☆	黒雲の分厚く流れ垣間見る深き青空光る白雲
2日	☆	十六夜の月よりＢＳアンテナは近づく夏のしるし受けをり
3日		杜てふは盛り盛りてその内に棲むさやけきものを護りて動かず
4日	☆	川風の吹く道に沿ひ鯉のぼり滝昇るごと身を揺らしをり
5日	☆	すがるもの一つとてなき青空でひたにもがきて鳴く揚雲雀
6日		連休の最後の夜は雨に濡れ学園都市の光冷たし
7日		八月と同じきほどの長さなる五月の昼は軽やかなりき
8日	☆	空映す田を渡り来し風の音の麦畑にてふと乾きたり
9日		注連縄は張られ神楽も聞こえ来て明日の夕べに祭り始まる
10日	☆	降るはずの雨降らぬ間に垂乳根の母は静かに死に給ふなり
11日	☆	着慣れたる喪服なれども母がため明日着るとは思はざりしを
12日	☆	生き変はり死に変はりしていつの日かこの恩をこそ返したきなれ
13日	☆	残りしは骨と写真と人々の記憶の中の笑顔なりけり
14日	☆	人てふは死なぬものなり縁ありし人の心に生き続くれば
15日	☆	歌ふべき言の葉一つ浮かばざる昼に雷鳴りて行き過ぐ
16日		幼き日思ひ描きしに似て非なる二十一世紀の光景よ
17日		切り通し暗き坂道昇り切れば不意に広がる田は緑なり
18日		二分経てば全てのものの入れ替はる白き光のプラットフォーム
19日		現世（うつしよ）は流れ流れて最奥の茜に染まる雲に溶け込む
20日	☆	知らぬ間に薔薇は咲きゐて風光り汗は流れずただ乾くのみ
21日	☆	久方の奄美の島の紬地の光の風に車輪梅咲く
22日	☆	写真には狩猟に似たるところありレンズより逃ぐる鴨もそを知る
23日	☆	青葉とは気付けば既に生ひ茂り日に照り映えてゐるものなりき
24日	☆	日は暮れて寄せる雨雲見えねども川面に映る街の灯ぞ潤む
25日	☆	安芸の地は浄めの雨の降り止みて旅路の我に薄日差し来る
26日		ありたけの種類の鳥の鳴き声の折り重なりて響く夏空
27日		何事が世に起きるとも日は暮れて朝（あした）はすぐに巡りくるなり
28日	☆	二十年天然酵母でパンを焼く我が家の空気知る酵母にて
29日	☆	涼風に薄紅葵の蜜を吸う蜂の羽音のしめやかに満つ
30日	☆	さりげなく花芥子はただ咲きにけり皐月の風に少しく揺れて
31日	☆	東京の掻き集め黒雲はにわかに昇る明日は六月

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