和歌ログ - 平成十八年皐月（五月）に詠める歌

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	平成十八年皐月（五月）に詠める歌
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1日		連休の狭間の都心ぽっかりと空きたる穴の如き昼過ぎ
2日		小糠雨降る夕刻の駅前にやうやく灯る車の明かり
3日	☆	風吹けばさざ波渡る田の面に映りて泳ぎゐる鯉のぼり
4日	☆	風渡る田にさざ波の輝けば早苗の緑広がりて行く
5日		赤々と見渡す限り続きゐて我もまた灯すブレーキランプ
6日	☆	南より吹く風は枝揺らせども家路を急ぐ人もなき宵
7日	☆	行く川と雲とを分くる人の世にこの夏もまた草は萌え出づ
8日	☆	そのままで役には立たぬ花ゆゑに白さゆかしき庭の鈴蘭
9日	☆	鉄道の遅れたる朝見上ぐれば戻りつつある五月の日差し
10日	☆	蜘蛛の巣に卯の花くたしの雨粒の輝きをれば払ふ能はず
11日	☆	田の面の早苗の色に映りこみ夜明けの世界静まりゐたり
12日	☆	行き止まりの迷路を戻り来たる如く薔薇の蕾の一つ出でたり
13日	☆	絶え間なき雨垂れを吸ひ川は行く丸く小さき波紋浮かべて
14日	☆	喘ぐ如く踏切を過ぐるディーゼルの客車の蛍光灯ぞ哀しき
15日		青空に若葉の映ゆる木に向かひ携帯電話のレンズかざしぬ
16日		見渡せばビニール傘の光る輪が舗道を埋めて揺れ動く昼
17日	☆	去りし冬の雪解け残り行く影の月の山こそ静まりてあれ
18日	☆	遥かなる酒田囃の鉦太鼓雪渓残る鳥海の峰
19日		稲筵久慈川沿ひの葦原に季節外れの案山子立ちゐぬ
20日	☆	蒲公英の白き綿毛の中心に孵化直前の恐竜はゐる
21日	☆	奄美なる島の踊りを習ひたること思ひ出す車輪梅咲けば
22日	☆	山際の溶くるが如き夏空の安芸の野を行く川静かなり
23日	☆	脳内の地図中の線は広島より伸び伸びて四時間都に戻りぬ
24日	☆	舗道では並木の若葉広がりて久方の日を浴びんとすなり
25日	☆	下町の小路を抜くる初夏の風は霞む山肌に届きて吹くか
26日		車輪梅の白く小さき花のもと紫陽花も芽を膨らませをり
27日	☆	恐るるを知らざりし日の輩（ともがら）と惧れかしこむるを知りて再会
28日	☆	南風渡る青田に真白にぞ舞ひ降り来たり鷺は佇む
29日		ドナドナは仔牛なりしかトラックの荷台の豚の鼻ぞ哀しき
30日	☆	宵にかけ雷雨となるを知る如く八手はその葉つとに光らす
31日	☆	夏空の白き光に薄紅の葵の花は溶け込みて咲く

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