和歌ログ - 平成十八年文月（七月）の歌

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	平成十八年文月（七月）の歌
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1日		猫のゐる最も居心地よき場所に人は一日留まる能はず
2日	☆	夕焼けと言ふには穏やかなる色の日の沈み行く長き夕暮れ
3日	☆	梅雨空の下のデジャヴゥに忍ぶ差異を知りゐたるらむデジタル画像
4日		予報でも降ると言はれし雨なれどかくまで空の暗きものとは
5日	☆	鉄屑と燃料を海に捨つる国の人如何ばかりひもじかるらむ
6日	☆	平壌も東京もまた何事もなきかの如く人は行き過ぐ
7日	☆	薄紅のマジョラムの花蜜蜂を呼びて行き交ふ羽音かそけし
8日	☆	久方の日は射し来たり我が影の脚の運びを眺め歩きぬ
9日	☆	濡れ濡れし路面に映る街の灯をヘッドライトは打ち消して行く
10日	☆	梅雨時の床屋の角の路地裏で湿り気残すタオル八枚
11日	☆	丁重に蜘蛛を捕らえて暁の緑色濃き庭に放てり
12日	☆	いにしへの峠の道の山並みの彼方に望む山形の街
13日		家移りをして半年の庭先で芽からやり直しの沈丁花
14日	☆	腹の下に小猿を抱く母猿の目より溢るる哀しき力
15日		夏の日の連休初日半袖とショートパンツの人の固まり
16日	☆	行く水は鏡となりて人の世をただ映すのみ決して裁かず
17日		ビニールの傘のみ光る夕暮れの坂道の果て明けぬ梅雨空
18日	☆	消え去りて久しきものの影なれば球磨川に沿ふ城跡青し
19日	☆	城跡に城は見えねど不揃いの石垣に生す苔はもの言ふ
20日		シートにて囲はれしビルの高きより電動カッターの音の雨降る
21日	☆	千里越え飛ぶ力得し顔なりき巣立ちも近きつばくろの雛
22日	☆	蕾さえ気付かざりしに今朝見れば白き木槿は咲いてゐるなり
23日	☆	生ひ茂る草刈り終はり夕暮れの風を渡さむ窓を開きて
24日	☆	水撥ねるタイヤの音も和らげて真緑の田は広がりてあり
25日	☆	誕生日を過ぎても梅雨は明けぬらしさほど稀なることにあらねど
26日		毎年のこの日の如く夏空は広がりてあり梅雨も明けぬに
27日		東京の梅雨明け近き空の下あまたの向きの矢印はあり
28日	☆	鮮やかに夏色の花咲きをればその片仮名の名ぞ知り初めき
29日		梅雨明けと言ふには雲の多くしてキーボード打つ手に滲む汗
30日		地に映る木立の影の際だてばさしもの梅雨も明けたりと知る
31日	☆	山姥の巡れる山の四季の色浮かびて消ゆる素踊り悲し

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