和歌ログ - 平成十八年水無月（六月）の歌

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	平成十八年水無月（六月）の歌
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1日	☆	久方の日は夏空の奥深き彼方より来て萌ゆる青草
2日	☆	田の水は沢より来たり世を流れ世ならぬ果ても潤し行くか
3日		鉄骨の空しく残る店舗跡冷たき風は止まりもせず
4日	☆	蝶は舞ひ雀遊びて燕飛び雲雀の昇る葦原の上
5日	☆	雑草の伸びぬこの夏花芥子は盛りを過ぎて芥子坊主増ゆ
6日	☆	この場所にマンション建つと素つ気なく看板告ぐるモルタルの壁
7日	☆	川岸に夕日を望み梅雨入りの明日より先に伸びたるを知る
8日	☆	梅雨入りを待つ空よりも濃き青のシートは揺れるドリルの音に
9日		整然と居並ぶ稲の細長き隙間に映る梅雨入りの空
10日	☆	自らは流れ行きつつ動かざる木々の緑と空映す水
11日	☆	街の灯の雨の路面に映るとも絶えて届かぬ深き水底
12日		緑濃き並木の道の行く果ての雲居隠るる筑波嶺の影
13日	☆	名も知らぬ道端の花その名前知れば我が名も花に届くか
14日	☆	赤紫に色味を増せる紫陽花の雨を呼びゐて雨は来たらず
15日	☆	建ち並ぶビルの隙間の細きより表通りを透かす異次元
16日	☆	梅雨空の白き皐月に限りなく幽かなるかな紅のけはひは
17日		玄海の雲の彼方に日は落ちて街行く人の長き脚見ゆ
18日		山笠を控へ陽気におはしますお櫛田様の新郎新婦
19日	☆	湿り気を含みて風は凪ぎにけり夏空背負ふ葵は揺れず
20日	☆	花時を過ぎし躑躅の植ゑ込みの自然の不揃ひ今は好まし
21日	☆	流されて惹き寄せられて舞ふ蝶のとまる花こそ浄土なりけれ
22日		奇蹟とは明日にも起きることの如くワールドカップを語る人々
23日		奇跡とは時ならざれば起きぬもの夜明けて梅雨の曇り空見ゆ
24日	☆	週末の郊外の夜の空晴れて広き駐車場の端より歩きぬ
25日	☆	新しき風に吹かれて歩きたし栗の花咲く木漏れ日の道
26日	☆	自らと向かひ合ひたきものの下に水は溜りて世界を映す
27日	☆	香り立つ花に誘はれ飛び来たり蜂と蝶とは和して蜜吸う
28日	☆	枯れかけて蘇りたる赤き薔薇小さくもなほひたすらに咲く
29日	☆	夏の日に溶け込む午後のビル街に動く人影ただ一つ見ゆ
30日	☆	ガード下に昭和の痕跡打ち捨つる中央線は音立てて行く

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