和歌ログ - 平成十六年葉月（八月）の歌

Wakalog Top へ（検索サイトからおいでの方はクリックしてご覧ください）

	平成十六年葉月（八月）の歌
それぞれの和歌をクリックすると、日記もご覧になれます。 (☆印= 日記オススメ）


1日		片隅の棚のそのまた隅なれど近きに眠るあの黒電話
2日	☆	この駅は市場なりとぞ知られたる夏の陽満つる雑踏の中
3日		湧き上がる雲の輪郭輝けば見へぬ夏の陽強く差すらむ
4日		エンジンは低く鳴れども草刈り機の進み行く後に道はできつつ
5日		鳥はちゅん蝉はじじじの時雨にて猫も鳴きをり姿見えねど
6日	☆	エアコンの水溜め置きてまん丸に映れる空を地に放つなり
7日		夕焼けを隠して雲の広がればその背後なる夕日偲ばる
8日		旧盆を前に稲穂は頭垂れ「温暖化」てふ三文字浮かぶ
9日	☆	金色の荘厳のもとこの我も本来「仏」であると知らさる
10日	☆	鐘見れば諸行無常と聞こゆるもこの身即ち仏ならんか
11日		大雨を告ぐる積雲山際にありてテレビのアンテナ高し
12日		空の色映せる海は国東（くにさき）を浮かべ静まる別府湾てふ
13日	☆	蒼海を滑りし後は青空で青紫の富士見下ろせり
14日	☆	狂い咲くただ一房の紫陽花は乾ける盆に雨を呼ぶらむ
15日	☆	物干しにぶら下がれるは干し物にあらで雨粒のみの盆なり
16日		誰となくいつよろづ坂越へし夜の明けて聞こゆる蝉時雨かな
17日		水かさの引きし小川の岸の葉は秋の雨待つ心地こそすれ
18日		すっぽりとどてらの如き雲羽織る富士を成層圏より眺む
19日	☆	帰りなむ垂直尾翼の彼方なる黒雲疾（はや）き空を横切り
20日	☆	打ち水の上をタイヤでなぞりつつ朝一番の宅配届く
21日		筋雲の下の稲穂は僅かにも黄金に色付き始めたるかな
22日		ベランダの白木に馴染む雨蛙草に戻るも白さ留めり
23日		唐突に秋は来にけり吹き抜けのカフェの真昼にシャンソンは流る
24日	☆	通勤の山手線は巨大なる升で量りて人を吐き出す
25日		温度計は夏の数字を示しをり秋色見せる空のもとにも
26日		どぶ川の流るる先に向日葵は夏の行方を見送りをりぬ
27日		風渡る土手のセイタカアワダチソウ頭は未だ黄味帯びずあり
28日		枝揺らす風に消さるる蝉の声草むらに鳴く虫はあれども
29日	☆	秋雨に土手の黒味は増しゐるにエトランゼなり庭の赤土
30日	☆	初心者の長女の握るハンドルに息を詰めをり助手席の我
31日		見渡せば倒るるほどになびきても野分の中に撥ね起きる葦

<< 前月へ

バックナンバー

翌月へ >>