和歌ログ - 平成十六年長月（九月）の歌

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	平成十六年長月（九月）の歌
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1日		郊外のショッピングセンターの屋根低く夕暮れ時の影のみ長し
2日	☆	ペダル踏む少年のシャツは風孕み鎧と化せり細き背離れ
3日		人の死は今生の実の刈り入れかその残り香の漂へる午後
4日	☆	焼香もそこそこに去る信薄き我をも救ふや阿弥陀如来は
5日		水溜まり空を映して静まれば地に穿ちたる世界は深し
6日		雷の明くる日はまたなゐ野分その明くる日に越後に向かふ
7日	☆	越後なる香り我が身の奥深き DNA に馴染める心地す
8日		乾きたる土潤へば今こそと草は伸びゆく台風一過
9日		露残る刈田に群れる白鷺に朱鷺の運命（さだめ）を避けよと願ふ
10日		自動車は単なる「モノ」と見ゆるらむ人を認めて鷺は飛び立つ
11日		人の世よ命日の人あまたあるこの日誕生日という友も
12日		早朝の浄き日浴びるジョギングもウィンドブレーカー着る頃となりぬ
13日	☆	草の色映す川面に舞ひ降りて鷺は見るらむおのが白さを
14日	☆	真横より見る観覧車平らにて花火もかくと思ひし頃あり
15日	☆	籾殻はまず黒く焦げしかる後香り残して白灰となる
16日	☆	目に見えぬ全ての流れ瀬の水の輝きて行く如く流れよ
17日	☆	通勤に出張観光里帰り朝の上野に世界は詰まる
18日		三角形二辺の和は他の一辺より長し点字ブロックにても
19日	☆	ふと見ればをちこちに咲く蕎麦の花その寡黙なる真白さもちて
20日	☆	彼岸前ヘッドライトは灯せどもまだ残りをり空の明るさ
21日	☆	虫のりり鳥のちちてふ声のして入り交じれるを聞き分くる朝
22日		雨を呼ぶ風は尾花を揺らしをり六日後には秋の十五夜
23日		ぽつぽつと咲き始めたる彼岸花彼岸過ぎには土手埋もるらむ
24日		紫のローズマリーの花咲けり無骨な枝に似ぬ可憐さで
25日		たちこめる雲は動かず風のみの吹き過ぐる午後秋は来にけり
26日		夜通しの雨の滴を残しつつ名月の夜を待つか尾花も
27日		この年も秋は来にけり雨垂れの水道よりも冷たくなりぬ
28日	☆	かっぽれが上野の山の雲晴らす浮かれ出で来よ今宵の月も
29日	☆	風渡る秋の夜長を行く雲の久しく切れて冴ゆる名月
30日		一日をデスクワークで過ごしけり雲に夕日の赤味差す見ゆ

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