和歌ログ - 平成十六年文月（七月）の歌

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	平成十六年文月（七月）の歌
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1日	☆	葦茂る土手に潜める牛蛙今朝鳴き止みて五月晴れなり
2日		懐の深き自然よ行く水よ乾き切る世を潤してあれ
3日		病床の母は息子の我よりも嫁の声にて喜び給ふ
4日		青白く霞める山の彼方より我が足元に緑は増せり
5日		ふるさとの往きと帰りにそれぞれの十割の蕎麦噛み締めにけり
6日	☆	観覧車を透かして見ゆる旅客機はいと小さくもゆつたりと飛ぶ
7日		青々と埋め尽くされし田の端に浅く残れる日溜まりの水
8日		淀川を照らし続くる夏の陽に白く染まりし商店街よ
9日	☆	夏の陽の傾きて影深まれば京都タワーはただ白く立つ
10日		夕食のピークを過ぎしファミレスにダウンビートを刻むブルース
11日		乾けるは草の根元の土のみにあらで我らの心の底も
12日		湧き上がる雲の内なるエナジーよラジオは常にガリガリと鳴る
13日		空梅雨も明けしと言へり無にゼロの名を与へたる如き心地す
14日		夏の陽は天狗の団扇の形なる棕櫚の葉ごしに庭に差すなり
15日		夕べには火の国に立つ我なればホットコーヒーのお代わりをする
16日		鷺山の下を流るる川底の石は光れり南国の陽よ
17日	☆	真白なる蓮の開けるかはたれはせぬ音もなほ響く心地す
18日		南国の日に浮き上がるあの山が霧島山とやうやう知れり
19日		手をかけて愛ずる甲斐あり一夏に二度咲き誇る紅の薔薇
20日		夏の陽の白き光は遠き日を呼び覚ましてぞ凍てつかすなる
21日		熱帯夜プラットフォームの淀みたる空気を分きて電車は来たり
22日		生き物の夏の暦は早々と稲穂の見ゆる頃に進みぬ
23日	☆	打ち水の風悦びて薔薇の木のてつぺんにあり花と蕾と
24日	☆	捉はれずただ舞ひ遊ぶ蝶を追ひ吾も捉はれずシャッターを押す
25日		急く心が我と我が道塞ぎゐる高速道路のパラドックスよ
26日	☆	誕生日前日の陽は落ちかかり歩道橋には人影もなし
27日		来年の秋に開業するといふ鉄道の秋おぼろなる秋
28日		午後三時四十五度の角度にて濃き影追ひ込む夏の日差しよ
29日		「慈雨」といふ文字が脳裏に浮かびたり台風もまた地をいつくしむ
30日		遙かなる海を行くてふ台風よこの地の色に黒味戻れり
31日		むせかへる路地裏に照る夏の陽は人の心の荒野見せしむ

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