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　 平成二十年 弥生 （三月） の歌　
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(☆印= 日記オススメ）
 　
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1日   春の夜の首都高速の渋滞に東京タワーの光は浮かぶ
2日   自動車の窓開け放ち頬に受くる風のそれほど冷たくもなし
3日 ☆ ありたけの街のネオンを曲面のガラスに映し車は走る
4日 ☆ かの国の黄色の砂は春風の手より漏れ落ち巷にぞ降る
5日 ☆ この街に風の道ありその道の只中に立つ旗の幸ひ
6日 ☆ 丘の木の黒々と浮く残照の空に消え行く白雲の影
7日 ☆ 雛壇の雛と同じき視線にて世を眺めゐる故郷の子ら
8日 ☆ ひむがしの日を柔らかに包みつつ霞みたなびく春は曙
9日 ☆ 白梅の香りを偕に楽しむは園を訪ぬる人のみならず
10日 ☆ 前線はいづこに向かふものとても牢獄なりと知るぞはかなき
11日 ☆ 朝霧の未だ晴れざる対岸の日の気配のみいや昇り行く
12日 ☆ ふきのとうの我に気付けと呼びかくる声の聞こゆる心地こそすれ
13日   神宮の杜を見下ろすビルにゐて半日かけて都市の仕事す
14日   雨止まず特急遅れうらぶれしホテルに泊まる厄落としなり
15日 ☆ 雪残る比叡の山に詣づれば仏耶諸聖も我を悦ぶ
16日 ☆ ひむがしの日をぐいぐいと押し上ぐる春の力の波ぞ満ち来る
17日 ☆ 数多き蕾の中のいくつかを先に咲かせて我を呼ぶ梅
18日 ☆ 蒲公英の咲くに気付きし昼下がり白き綿毛は早飛びゐたり
19日   彼岸とは寒さの戻るものにして明くれば春の風ぞそよ吹く
20日   彼岸とも思へぬ今日の雨風を受けてぞ梅の色映るらむ
21日 ☆ 両岸のビルに護られ神田川春の嵐を知らず漂ふ
22日 ☆ 枯れ草の色のみなりし我が庭に色浮かびくる春ぞ嬉しき
23日   脳内で作り込まれしイメージを常に裏切る写真てふもの
24日   液晶の光溢るるこの街の雨の香りを運び去る風
25日 ☆ 目指し行く霧の彼方の見えぬもの目には見えねど確かなるもの
26日 ☆ 新しきこととて何ぞ始むべき 蛙 （かはづ） の鳴きて桜咲く日に
27日 ☆ 雑草といふ名の草のなきことを人の内なる神は言はしむ
28日 ☆ 日溜まりといふ名の池に肉厚の木蓮の白幾重にも浮く
29日 ☆ 春色の満つる水面にひた揺るる白きを見つめ鷺は舞ふらむ
30日   満開の桜は青き空の下に眺めたきなり今日の花冷え
31日   花冷えの雲の晴れ間の水色の空の青みの増してゆくなり
　
　
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