和歌ログ - 平成十八年神無月（十月）の歌

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	平成十八年神無月（十月）の歌
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1日	☆	言挙げをせぬ白さなり道端の蕎麦の畑に花は咲き満つ
2日		半年を堰の底にて過ごしたる地に背の低き草は生ひつつ
3日		二十ものよろづの坂を越え来たり尾花は秋の夜の雨に濡れ
4日	☆	真直なる夏色消えし野の宵に狂ほしきまで曼珠沙華咲く
5日	☆	駅舎より雨の巷に音もなくエスカレーターは沈み行くなり
6日		大雨に川面は膨れ渦巻けど勤めの如く虫は鳴きゐる
7日	☆	大雨の二日続きて過ぎぬれば曙の如く鳥たちは鳴く
8日	☆	名月の天の低きに大きくも見ゆれば酒の燗をつけたり
9日	☆	行く水の秋には秋の高さあり釣り糸の時に白く光れば
10日		僅かにも銀杏の黄味を帯びぬれば風に乗せたし我が言の葉も
11日	☆	秋浅し並木の銀杏それぞれの色合いをして立ち並びをり
12日	☆	朝霧の彼方に首長竜の如くパワーショベルは頭垂れゐる
13日	☆	若狭より鯖運びたる道を辿り京の都に秋の日は暮れぬ
14日	☆	えふ分の壱の揺らぎは天地の始めよりきて滝となりしか
15日	☆	秋風の渡る日暮れは過ぎし日も明日も忘れむああ茜雲
16日	☆	それぞれの目的あれど自動車は首都高速に捕らはれてゐる
17日		我が肌に触るる気温の三度下の空気の中に父母おはすらむ
18日	☆	をちこちのたわわなる実で柿の木のかくまで多きことを知りたり
19日		身の丈を合わせ居場所を得たりとは哀しやセイタカアワダチソウ
20日	☆	秋の日を半月浴びし赤のまま渡る風にも色映しをり
21日	☆	秋の日は不意に暮れをりマジョラムの庭居の宵の中に溶けゐて
22日		鬱蒼と茂りをりたる夏草を刈り終へてこそ秋は深まれ
23日		半月を晴れ続けたる秋空に雲広がりてコスモスは揺る
24日		雨水の沢の如くに流れ下る急坂なれど貼り付く枯葉
25日	☆	三日降りし秋雨もただ一夜にて乾けば白き道の影濃し
26日	☆	取手駅東口より発つバスの客待つうちに日は暮れにけり
27日		小糠雨止めば夜来の風も止み猫も遊びに飽き走り止む
28日	☆	行く水の奏づる楽は耳にては聞こえざれども土手にこだます
29日		紫の松虫草の葉に乗れる夜来の雨の粒は小さし
30日		アメリカの光の色のつくばなる街に溢れて夜は更けにけり
31日		故郷の銀杏は既に黄に染まり落ち葉となりて地を覆ふらむ

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