和歌ログ - 平成十七年水無月（六月）の歌

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	平成十七年水無月（六月）の歌
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1日		弁当を持ちて遊びしあの土手もクローバーにて柔らかかりき
2日	☆	人の手を離れてもなほをちこちに咲き香りゐる薄紅葵
3日	☆	人は皆花のみを見て顧みず無骨なるかな薔薇の幹とは
4日	☆	打ち震ふめしべに蜂は遊びをり花といのちを預けあひつつ
5日	☆	夏至近き黄昏時の遠き灯よ誰が心にぞ灯る明かりか
6日	☆	五月雨を待つ田の細き畦越しに風色移り麦の秋なり
7日	☆	風通ふ廊下の隅に猫の毛の房となりては音立てず舞ふ
8日		長き日の帰り道こそ楽しけれ利根川越しに日はまだ高し
9日		明日よりは梅雨となるらし湿りたる重き空気を潤ひとせむ
10日		包丁の音もしつとりと聞こゆなり紫陽花の色濃くなりゆけば
11日		岩走る上州の利根その中に長竿もちて釣り人の立つ
12日	☆	梅雨空のもとに広がる座禅草悟りし僧は里にあるらむ
13日	☆	五月晴れに色際立てる薔薇揺らし乾ききることなく渡る風
14日		夏至近き夕刻の日は白くして家路の長さ引き受けてあり
15日	☆	五月雨を葉に宿しては自らの紫色を映す紫陽花
16日		日本の梅雨に咲く薔薇ニューヨークで求めし透明の花器に挿したり
17日	☆	辛うじて小川の土手の内側の水面の際に樹は自然たり
18日	☆	老松も新しき芽の一節の生まるる時は常に今にて
19日	☆	次々に散る花びらを哀しまず薔薇は新たな花を開きぬ
20日	☆	宵待月昇るにつれて白きより色増し行けど長きかはたれ
21日	☆	土地々々の蕎麦を打つ人見入る人茹で上がれるを手繰る人々
22日	☆	五月晴れ続けば今日の五月雨もただ束の間の雨となるらし
23日		大通りの銀杏並木の根元より新しき葉も枝も緑に
24日	☆	粒々の固さ残れる舌に乗り僅かに甘しブラックベリー
25日	☆	自動車のエアコンを止め木陰にて微かな風を我が身悦ぶ
26日	☆	数知れぬ虫飛び来たり幾羽かはフロントガラスの染みと化したり
27日	☆	夏てふは常に過剰を湛へゐて五月雨のうちに溢れ来るなり
28日		五月晴れビルの真中に降る滝も既に日常となり果てにけり
29日		水滴を弾く緑のボンネットに映る木槿（ムクゲ）の異なる緑
30日		雑草の背丈ほどにも伸びる傍に薄紅葵は飄然と立つ

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