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　 平成二十七年 神無月 （十月） の歌　
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1日 ☆ 夜更けには嵐来るらし牛久沼にその前触れの波の立ちゐる
2日 ☆ この年は夜来の風に散る花もなくて木槿は闇に佇む
3日 ☆ 穏やかに青空と白き雲を映す湖面は皆を善人にする
4日 ☆ 坂道を風より速きスピードで我が自転車は真直ぐに下る
5日 ☆ 小貝川に波紋を刻む向かい風かき分けながら自転車をこぐ
6日   水かさの減りたる川の土手腹にセイタカアワダチソウ咲き始む
7日 ☆ 地平線に沿ひたる雲に区切られて蒼と紅に染まる夕空
8日   明日の朝一番列車で鳥取に我は発つなり空は晴れゐる
9日   郡家 （こうげ） とふ駅に停まりて車窓より彼方の山の峠を望む
10日 ☆ 白鷺といふ名の城の六層の天守閣よりみる四百年
11日 ☆ 小糠雨降り続きたる一日も日暮れて道は乾きゐたりき
12日   地平まで広がり伸びる秋空を埋めて綿雲白く浮くなり
13日 ☆ さわやかに暮れていく日のうちにある慌ただしさとよしなしごとよ
14日 ☆ 黄昏は薄紫に空を染めまだ真直ぐにぞすすき立ちゐる
15日   露出せる川底に取り残されし発泡スチロールの白き箱
16日   ハロウィーン終はらぬうちにクリスマスケーキの香りし始めにけり
17日 ☆ 明くる日は穏やかに晴れ渡るとふ夕暮れ空にその兆し見る
18日 ☆ 平らかに流るる川は平らなる水面に人の世を映し行く
19日   二十年ぶりの登山に靴揃え胸躍らせてその日待ちゐる
20日 ☆ 日没は日毎一分早まりて散歩の犬もはや通り過ぐ
21日   端に淡きピンクの色をして姫蔓蕎麦とふ花の広がる
22日   とりたてて綺麗といふに足らずとも八つ手の花の咲き始めたり
23日   大輪の百合の花束窓際に生けて香りに酔ふ定年後
24日   牛久沼淡き紅薄れ行き夕焼け小焼けのオルゴール渡る
25日   真夜中に木枯らし一号吹き渡り明けて川面に深き波立つ
26日   日暮れての名古屋の空に立ち上がる高層ビルの窓の明かりよ
27日 ☆ 枝先で勢ひ込みていちはやく染まるもみぢ葉我が姿なり
28日 ☆ 夕焼けを反射し光る北空に浮き上がりたる赤城の山影
29日 ☆ 稜線で世界を分けて片側に雲の湧きたる赤城の山よ
30日 ☆ 小貝川に膝まで入りて竿を振り鮒釣る人の小さき背見ゆ
31日   無造作に廊下の隅に置かれたる Wifi ルータのビジネスホテル
　
　
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