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　 平成二十六年 霜月 （十一月） の歌　
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1日☆ 白鷺は飛び去りてその白さのみ秋雨と薄霧のうち残りゐるなり
2日☆ 秋といふ季節のかくも長き年は二度となからむ薄の穂揺る
3日☆ 夕暮れの雲と陸との隙間には紅く染まれる空深かりし
4日  秋晴れの里の土手より北に望む筑波の嶺の際立ちてあり
5日☆ 木枯らしの吹きて冷え込む夜明けにも咲く寒菊のよき面構へ
6日☆ 裏庭は過ぎにし夏の終はりよりチェリーセージの散りてまた咲く
7日☆ 立冬の日は疾く暮るる夕暮れの過ぎたることも気付かざるほど
8日  日の射さぬ川の畔にほほけたる薄の穂揺れ冬がまた来る
9日☆ 街路樹の紅く染まりてこの年の分厚き秋の行くを見守る
10日☆ 冬至過ぎて日は疾く入れど夕焼けと呼ぶほど燃ゆる空とはならず
11日☆ 市街地の忘れ去られし斜面には三十年の竹林青し
12日☆ 立冬の筑波を包む山霧に濡れにぞ濡れて咲く躑躅あり
13日  赤緑金色の玉のクリスマスツリーに白きトナカイは跳ぬ
14日☆ 人も鳥も腹は満たされ青空に鈴なりの柿獲る者もなし
15日  冬用の分厚きカーテンは自らの重みで皺を伸ばし広がる
16日  校庭の金網沿いの一本が葉を残しゐる桜の並木
17日☆ 冬枯れの色となりゆくこの土手を三十七年眺め来たりき
18日☆ 晩秋の甲斐路の駅に吹き付くる三月季節を進みたる風
19日☆ 白樺と唐松の木は葉を落とし青空のみの林明るし
20日☆ 長々き今年の秋は終はりたり影絵の如き細き梢よ
21日  ゆつくりと絵を見るうちに世の中は小春日和の日が傾けり
22日☆ 信越の地震のニュース聞く夜に電源タップが小さく光る
23日  小春日は三日続かぬものなれば冬の深まる様をただ見む
24日  葉の散りし木槿を透かし対岸の冬枯れの色見ゆる夕暮れ
25日 ☆ 絶妙の間合いで不意に広がりて我が存在に届く菊の香
26日☆ 揺れ揺るる白き薄の振幅の冷たき風に吹かるる帰宅
27日  天空に白き三日月残しつつ小春日和の日は沈み行く
28日☆ 犬を連れ散歩する人影もなし雨降りさうで降らぬ夕暮れ
29日  それまでは霧に包まれゐたること空晴れ渡り気付きたるなり
30日☆ 使い切り供養もなしに破棄さるる軽きトナーの重き黒色
　
　
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