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　 平成二十六年 葉月 （八月） の歌　
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1日 ☆

土手草の刈られ干し草色となり南の風を遮るものなし
2日 ☆ この年の七夕もまた暑き日の暮れて銀河の揺るるを見るか
3日   西に降る大雨のその一割も降れば熱帯夜とはならぬに
4日 ☆ 鳥たちに目立たぬやうに青きまま枝に下がれる柿の実ひとつ
5日 ☆ 土手道の臭木とふ木の花と実を見れば忘るる葉の臭きこと
6日   アブラゼミニイニイゼミにヒグラシにツクツクホウシも早鳴き始む
7日 ☆ 飛行機のドアより足を踏み出せば北の大地の風は吹くなり
8日 ☆ 雨上がり湿気はあれど蒸し暑しといふこともなし北の大地は
9日   北海の地より戻れば北海で浴びたるほどの北風の吹く
10日 ☆ 日本海を北上すなる台風と寄り添ふ如く陸を走りぬ
11日 ☆ 野分去り寺に参ればどの墓も雨に洗われ清められをり
12日 ☆ ふるさとの湊の沈む長きときの流れのうちに吾もあるなり
13日   マイボトルてふものを買い換へたるは暑き日の旅の友となるゆゑ
14日 ☆ 晴れと雨の一日ごとに訪れて今日は雨降る番の一日
15日   日替わりで晴と雨との続く頃明日上方に吾は旅立つ
16日  車窓より眺むる雲は霧の如く地を這ひて雨降らしゐるなり
17日☆ 宇治川は琵琶湖の水を一本の流れにまとめ淀に押し込む
18日  一本の蝋燭の立つ姿なりと人は言ふなり京都タワーを
19日  雨上がり青き空なる京都よりさらに西へと我は発ちたり
20日☆ 日暮れても関東平野の青空の蓄熱層と化してぞ暑き
21日☆ 咲き代わり散り代わりては花びらの地に落ちてなお木槿なりけり
22日☆ どうとでもしてくれといふ青さなり立秋過ぎの空のしかかる
23日  処暑となり眩しからざる日も暮れぬうちより虫の声ぞ聞こゆる
24日☆ 雑草の増え行く主なき庭にこの夏も咲く白百合の花
25日  蝉が鳴き日の傾けば蟋蟀や松虫鳴きて夏は暮れゆく
26日☆ この夏の暑き盛りは過ぎたりと水面の色で告げて行く川
27日☆ 女郎蜘蛛車を停めて丁重に窓の外へと退出願ふ
28日☆ 駅に着く電車が通り過ぎて行きとりでーとりでーのアナウンス聞こゆ
29日☆ 夕暮れの渡良瀬川の鉄橋の下り電車の客は少なし
30日☆ 夏はもう過ぎたりといふ人多しさざ波の立つ川行き行きて
31日☆ 日の暮れに空に漂ふ鱗雲は秋の雲にてあるらむと思ふ
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