和歌ログ - 平成二十四年長月（九月）の歌

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	平成二十四年長月（九月）の歌
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1日		肥後の国の夜をゆつくりと切り裂きて市街電車は走り過ぐるなり
2日	☆	湧き上がる巨大積乱雲の下で日照りを破る雨は降るらむ
3日		夕暮れに我を迎えて鳥海は雲の帽子を取りてみせたり
4日		みちのくの土産の梨と桃の色の夏の終わりを告げてぞ香る
5日	☆	秋風に蜘蛛の糸揺れ給油所の火気厳禁の看板赤し
6日		をちこちに街の灯映す水溜まり残りて秋の風渡りゐる
7日	☆	水面の下には長き脚を沈め首を伸ばして魚を追ふ鷺
8日	☆	完熟の果肉が剥がれ種のみがするりと残る桃ぞ嬉しき
9日	☆	季節とは日暮れて進むものなれば残暑を嗤ふ虫たちの声
10日		川土手の枯れ草色は枯れたるにあらで日焼けし草の色なり
11日		暑き日の醜き家鴨の子のパンの思はぬ旨さ何を語るや
12日		目の痛くなるほど青き空の下に川底見せて水淀みゐる
13日		ぎらぎらと目を射すほどの青空の下で木槿は絶えず咲きゐる
14日		旅多き残暑の秋の朝発ちの我を見送る庭の草々
15日		南海に野分のありて近づけど白き芙蓉は未だなびかず
16日		野分より伸びたる雲は大粒の雨を落として去るも疾きなり
17日	☆	昼までに野分は過ぎて動かざるものの残れり長崎の地に
18日		神に向く折れざる心この土地に続き来たりて天仰ぐなり
19日	☆	暑き日の刈田に緑敷き詰めて白き鷺舞ふ様を照らせり
20日		長き竿の時折立ちて風に揺る神通川に鮎を釣る見ゆ
21日	☆	大いなる石の隙間の小さきも石垣をなす石にこそあれ
22日	☆	をちこちの旅より戻り坂東のいと早き日の入りに驚く
23日		カーテンの隙よりのぞく宵闇に彼岸の雨の降り残りたり
24日	☆	どんぐりは日に光る葉と変はりなき青き色にて成りそめゐたり
25日	☆	小名浜の雲を染めたる夕焼けに暗き影なき時来るを待つ
26日	☆	日の暮れのかく早きとぞ知りにける高速道のレストランにて
27日		日帰りの出張終へてつくばなる地に立てば秋は深まりてあり
28日		雲の縁巡る季節の境目の空に浮き立つ黄昏の時
29日	☆	待宵の月を望みてこの年の野分の前の名月とせむ
30日		南より野分近づく空の下東京タワーは立ちて揺れざり

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